ありがとう、愛車

　ありがとう。今までの愛車。

　2009年、私がまだ大学生で祖父母の近所に住んでいた時。

　祖父が「車を買い替えるから一緒に選ぼう。俺が運転できなくなったらその車はあげる。その代わり、俺やおばあちゃんが出かけるときに、運転してくれ。」そう言って、一緒に選んだ車があなたでした。

　最初、普段は祖父が運転して、私が行ったときは私が運転して、スーパーや近所のレストラン、色々な所に行きましたね。

　でもそのうち祖父も祖母もホームに入居して、あなたを運転するのは私だけに。

　約束通りその後も、祖父がお出かけの際は私の運転で色々な所に行きました。

　楽しくお食事しに行くときもあれば、亡くなった親戚の葬式に行くときも。

　そして、祖父の葬式の時も、祖母の葬式の時も、親戚の皆を乗せて送迎をしてくれました。

　祖父母との最後の楽しい思い出も、辛い思い出も、すべてあなたと一緒にありました。

　本当にありがとう。

　友達との思い出も色々ありましたね。

　今でも続いている、大学での親友グループ。彼らを乗せて、色々な所に遊びに連れて行ってくれました。サバゲーに行ったり、長野まで行ってみたり、横浜の親友の家、茨城の親友の家、東京の親友の家、千葉の親友の家、皆の家に遊びに行きました。彼らの引っ越しの手伝いもしたことがありましたね。親友との思い出の中心にはいつもあなたがいました。

　本当にありがとう。

　千葉から北海道に帰省するときも、活躍してくれましたね。

　毎年、夏には千葉から青森まで下道で12時間かけて走り、フェリーで北海道の実家まで行きましたね。まぁ、晩年は疲れて新潟や茨城からフェリーに乗ることもありましたが、、、

　そして北海道でも、札幌、函館、旭川、知床と、北海道のほとんどを行きましたね。　

　千葉で就職してからも、毎日の通勤、お疲れさまでした。

　千葉は狭い道が多いけれど、あなたのコンパクトさのおかげで通勤も辛くありませんでした。

　そして、私が故郷の北海道で再就職したので、一緒に北海道に来ましたね。

　祖父は「いつかはお前も北海道に帰ることになるだろう、その為に４駆の寒冷地仕様にしよう。」そう言ってくれたのであなたにしましたね。10年越しに、本当にそうなるとは思ってもいませんでした。

　北海道に帰ってきてからは、父や母を乗せてお出かけするようになりましたね。あなたのおかげで、少しは親孝行ができたと思います。

　本当にありがとう。

　けれども、北海道の、大自然の地形や大雪はあなたにとっては酷でしたね。

　それ以上に、あなたの長年の疲れも見えるようになりました。走っていると、あなたの体が悲鳴をあげているのを、14年運転してきた自分にはとても伝わってきました。

　祖父や祖母、大親友達との思い出が詰まったあなたと別れるか、とても悩みましたが、これからの北海道での生活を考えて、レイバックにあなたの後任をお願いすることにしました。

　恐らく、これから、あなたと歩んだのと同じ道を、レイバックも歩むと思います。

　あなたが祖父と祖母を最後まで助けてくれたのと同じように、父と母を最期までレイバックが助けてくれると思います。

　あなたが私を色々な所に連れて行ってくれたのと同じように、レイバックも私を色々な所に連れて行ってくれると思います。

　あなたが親友との楽しい思い出を作ってくれたのと同じように、レイバックも親友との新しい楽しい思い出を作ってくれると思います。

　あなたの思いは、レイバックが引き継いでくれると信じています。

　そういえば、北海道に引っ越すときは大洗港からフェリーに乗ったけど、その時に茨城の親友と千葉の親友がフェリー乗り場までお見送りに駆けつけてくれたましたね。その時、茨城の親友があなたに対して「お前も頑張れよ、コイツのことよろしくな。」とあなたに私の事を託してくれましたよね。その時、私は、「あなたも親友グループの仲間の一員」だと、親友も感じてくれていたことを、自分の事のように嬉しく思いました。

　いままでありがとう。ゆっくり休んでください。

　そして、これからよろしく。レイバック。　